日本臨床外科医学会雑誌
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食道癌患者における細胞性免疫能低下の要因
斉藤 貴生膳所 憲二桑原 亮彦掛谷 和俊平尾 悦郎多田 出若杉 健三小林 迪夫
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1986 年 47 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

食道癌41症例を対象として,末梢血リンパ球数, T細胞・B細胞数, PHA幼若化能, PPD皮内反応を,入院時,術前合併療法(放射線治療および化学療法)後,術後4週, 8週に測定した.入院時における食道癌患者の細胞性免疫能は,どの指標の平均値も対照とした胆石症患者のそれより低く,特にPHA幼若化能は正常値以下であった.そこで,入院時における食道癌患者の細胞性免疫能低下と年齢,癌の進行度,摂食障害の各因子との関連を分析したところ,いずれの因子も細胞性免疫能の低下と関連していた.さらに,食道癌に対する術前合併療法と手術の施行は,リンパ球数, PHA幼若化能, PPD皮内反応を著明に低下させ,明らかな免疫不全をもたらした.以上より,食道癌患者の細胞性免疫能低下の要因として,手術と合併療法による治療侵襲,担癌,飢餓,高齢の各因子があげられ,特に治療侵襲の比重が大きいことが示された.

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