日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
肝転移を伴なう胃癌症例に対する治療法の選択とその治療成績
黒田 吉隆辻 政彦喜多 一郎大戸 司上野 桂一
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 47 巻 1 号 p. 9-16

詳細
抄録

1973年から1983年までの11年間に手術された同時性肝転移を伴う胃癌症例は97例であるが,各種治療法からみた治療成績について検討を加えた.肝転移症例全体の50%生存期間は4.7ヵ月であり,このうちH1(26例)では6ヵ月, H2(24例)では4.2ヵ月, H3(38例)では2.6ヵ月の50%生存期間を得た.腹膜播種を伴う症例は術後早期では播種を認めない症例との間に生存期間で差異はみられなかったが,播種症例の全例が18ヵ月以内に腫瘍死した.組織型からみると, por, tub 1, tub 2に肝転移度の増大が認められた.原発巣切除に加え化学療法施行症例の50%生存期間は2.8ヵ月となり化療非施行例の1.4ヵ月に比し良好であった. 5-FUの持続動注療法施行12例中4例に肝腫の一時的退縮がみられ,最長生存19カ月を得ている.また胃切除に加え8例に肝転移巣合併切除が施行され, 2例に7年10ヵ月, 10年2ヵ月の長期生存を得た.以上より,肝転移巣の合併切除は良好な予後を期待させる結果を得た.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top