日本臨床外科医学会雑誌
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早期胆嚢癌を合併した腸チフスの1例
大嶋 隆高木 雄二猪野 睦征橋口 勝敏
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1986 年 47 巻 1 号 p. 110-113

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抄録

症例は74歳の女性で, 45年前腸チフスの既往があり,今回家族内に腸チフスが発生したため検査をうけ保菌者と判明した.胆嚢結石症との診断を得たので,除菌の目的で胆嚢摘出術を行ったところ,粘膜内に限局する早期胆嚢癌を合併していた.病理学的には,炎症細胞浸潤にあわせ,胆嚢の癌部・非癌部には,腸上皮化生が認められた.チフスで,長期にわたり排菌がみられる保菌者の多くは,胆道系に結石を有しているといわれている.これらチフス保菌者と,胆嚢癌の合併例について検討してみると,除菌の目的で胆嚢摘出術を行った症例の9.4%に胆嚢癌が発見されている.また胆道系癌による死亡例は保菌者の死亡例の5.9%を占め,更に保菌者死亡例に占める癌死の比率は有意に高値であった.チフス菌保菌者に胆石症の合併をみた場合には,胆嚢癌を含む肝胆道系癌の合併率が高い事を考えて,診断・治療方針をたてる必要があると考えられる.

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