日本臨床外科医学会雑誌
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80歳以上の高齢者腹部大動脈瘤5例の手術経験
志田 力良原 久雄西脇 正美太田 稔明石井 昇小沢 修一岡田 昌義中村 和夫安岡 俊介
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1986 年 47 巻 1 号 p. 68-71

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抄録

最近の2年間に経験した80歳以上の高齢者の腹部大動脈瘤の5手術治験例を報告した.症例は全例男性で,年齢は80歳から85歳,平均82歳であった.主訴は腹部拍動性腫瘤が4例,腹痛及びショックが1例であり,この例は瘤破裂例であった.手術は定期手術が4例,緊急手術が1例に行われた.大動脈瘤は全例腎動脈以下の腹部大動脈にあり,その直径は7~10cmであった.その他,腸骨動脈瘤が3例に,大腿動脈瘤が1例に合併していた. 3例にY型人工血管を, 2例にI型人工血管を用いて動脈置換を行った.手術時間は3時間から9時間50分,平均6時間であり,術中出血量は1,300mlから5,500ml,平均3,600mlであった.手術死亡はなく,術後合併症として難治性の下痢を1例に認めた.現在術後6カ月~1年半であるが,全例元気に日常生活を営んでいる.
われわれは,腹部大動脈瘤患者に対しては直径が7cm以上であれば年齢のいかんをとわず,積極的に手術を行う方針である.

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