日本臨床外科医学会雑誌
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比較的まれな末梢動脈瘤の3例
秋本 文一小林 修新谷 清守田 知明兼行 俊博
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キーワード: 末梢動脈瘤
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1986 年 47 巻 1 号 p. 78-81

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抄録

比較的まれな末梢動脈瘤の3例を経験した.
第1例は左経骨動脈瘤の診断のもとに切除,血行再建を行ったが,組織学的に平滑筋腫であった.本例では血管造影上hypervascularな組織が瘤を包み込んだ像を示したのが特徴的であった.血管に発生した平滑筋腫の報告は極めてまれでありそのほとんどのものは悪性腫瘍である.
第2例は下腹部痛を訴えてショック状態で来院した.緊急開腹したところ.左内腸骨動脈瘤の破裂であったので,内腸骨動脈の分岐部で結紮を行った.腸骨動脈領域の動脈瘤は破裂頻度が高いがまれなものであり,診断が困難な疾患である.我々の症例では,動脈瘤中枢側の結紮術を行ったが,動脈瘤が大きく術後周囲臓器への圧迫症状が残る可能性のある症例では,瘤切除やendoaneurysmorraphyの必要があろう.
第3例は右側深部大腿動脈に発生した動脈瘤で,瘤切除と血行再建を行った.深部大腿動脈瘤の発生率は,大腿動脈瘤のうち0.1~0.5%にしかすぎず,非常にまれである.この理由として深部大腿動脈瘤が解剖学的に,筋肉に保護されるために外傷を受け難いこと,筋肉のmilkingで動脈硬化性病変が生じ難いこと等が理由として考えられる.深部大腿動脈は浅大腿動脈が閉塞した場合に,下肢の側副血行路として重要であり,動脈瘤摘除術は血行再建することが望ましい.

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