日本臨床外科医学会雑誌
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Popliteal Artery Entrapment Syndromeの3手術治験例
自験例および本邦集計例の検討と膝窩動脈第二部における閉塞性病変の鑑別診断について
桜井 恒久山田 育男太田 敬塩野谷 恵彦
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1986 年 47 巻 1 号 p. 82-91

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抄録

Popliteal Artery Entrapment Syndromeとは膝窩動脈が先天性の走行異常などにより腓腹筋などに捕捉され狭窄および閉塞をきたす疾患である.ここに本疾患の3症例を報告し,本邦における報告例を集計,検討するとともに同時に膝窩動脈閉塞性疾患の鑑別診断についても考察を加える.症例は21歳男子(症例1), 45歳女子(症例2)および18歳男子(症例3)であり全例間歇性跛行を主訴としていた.全例に動脈造影にて膝窩動脈第二部の分節状閉塞を認め,症例1, 3は両側発症のEntrapment syndromeの術前診断がなされ,症例2は術中所見により診断が確定された.症例1, 2ではVein bypassが行なわれ,症例3においては1肢にはVein bypassが,もう1肢には腓腹筋内側頭の切離術のみが行なわれた. Delaneyの病型分類に従えぽ,症例1は両側ともType I型であり,症例2はType III型,症例3は1肢がType IV型,もう1肢がType II型であった.集計し得た本邦報告例は今回報告した3症例を併せて40例であった.その集計結果では,本症は平均25歳と若年男子に多く,両側発症は約25%に認められた.動脈造影所見では,動脈閉塞を示したものは31例34肢であり,狭窄または圧痕を示したものは9例11肢,正常とされたものは1例1肢であった.本疾患の特徴とされる膝窩動脈の偏位は28例36肢に報告されていた.もうひとつの特徴とされるpoststenotic dilatationは8例9肢に報告されているが,そのほとんどは圧痕または狭窄の症例であった.また,下腿動脈の閉塞が8例8肢に報告されているが,これは変化した膝窩動脈からのembolismの可能性もあり今後の詳細な検討を要する. Entrapmentの病型はDelaneyの分類に従えばI型: 11例12肢, II型: 10例12肢, III型: 6例6肢, IV型: 1例1肢,分類不能のものが5例5肢であった.

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