日本臨床外科医学会雑誌
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教室における潰瘍性大腸炎とクローン病の治療成績
林 民樹裏川 公章長畑 洋司中本 光春平井 康博松井 祥治福岡 秀治態谷 仁人佐埜 勇斉藤 洋一
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1986 年 47 巻 2 号 p. 172-180

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抄録

私達が経験した潰瘍性大腸炎8例,クローン病5例の治療成績について検討した.潰瘍性大腸炎の保存治療のみで緩解をえた症例は5例で,退院後の再燃を活動期月数の割合でみると平均32%であった.手術例は全結腸直腸切除回腸瘻造設術,亜全結腸切除上行結腸直腸吻合術,Kock法の各1例であった.クローン病は5例あり2例に術後再発を認めた.十二指腸に再発し,幽門狭窄症状があった1例には胃切除術(Billroth II法)を行い,残り1例はサラゾピリンにて寛解した.潰瘍性大腸炎は良性で若年者に多いことから,自然肛門温存術式を積極的に検討する必要があると考えている.クローン病の手術に際しては,再発の原因は不明で,術中に診断できないような微小病変からの再発例もあるため,合併症をおこしていないskip lesionの切除やリンパ節ごとen blockに切除する術式については,今後症例数を重ねて慎重に対処する必要がある.

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