抄録
腸結核に併存した大腸癌の1例を報告した.症例は56歳女性で,腸閉塞のための緊急手術を行い,手術所見より腸結核を疑い,術中組織診断で癌の併存が確認されたため右半結腸切除術を施行した.著しく変形した回盲部のバウヒン弁近傍に全周性・輪状の潰瘍性病変があり,組織学的には漿膜下まで浸潤する粘液癌であった.これに連続した結腸にはmucosal bridgeおよび多数の潰瘍瘢痕を伴う粘膜萎縮帯がみとめられ,結核菌・乾酪肉芽腫は同定されなかったものの,陳旧性腸結核に相応する病変であると考えられた.
本併存例の本邦報告例34例を集計し,自験例と合わせて臨床病理学的に検討した.