日本臨床外科医学会雑誌
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48 巻, 11 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
  • 高見 博, 四方 淳一, 阿部 令彦, 三村 孝, 別所 隆
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1773-1778
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    著者らは1982年より上皮小体全摘出・自家移植術を施行した腎性上皮小体機能亢進症22例の治療成績を検討した.骨・関節痛は90.9%,筋肉痛は77.3%に認められ, X線所見では骨膜下吸収像は95.5%にみられ,石灰化と病的骨折もそれぞれ50.0%および18.2%に認められた.血清cPTH値は全例に,血清Ca値は36.4%に陽性を示した.手術は上皮小体を全摘出後,その一部を前腕筋肉内に自家移植した.
    術後6カ月から4年4カ月までの観察期間では,骨・関節痛は81.8%の症例で殆ど消失し,残りの症例でも改善傾向を示した.軟部組織や血管の石灰化と骨の脱灰は術後6カ月頃までに改善された.現在カルシウムを補充している症例や再発した症例はない. 1例に左反回神経麻痺を認めた.
    以上より,本術式は腎性上皮小体機能亢進症に特有な症状を呈する症例に対する対症療法として臨床的に有用と考えられる.
  • 吉田 和彦, 霞 富士雄, 深見 敦夫, 西原 謙二, 長野 郁夫, 秋山 太, 吉本 賢隆, 渡辺 進, 西 満正, 坂元 吾偉, 菅野 ...
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1779-1783
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    (目的) 2cm以下乳癌に対する非侵襲検査(触診, MMG, US)の診断能を検討した. (対象および方法) 3年間に扱った組織学的に確定診断の得られている乳腺疾患3,106例,内2cm以下の病変1,941例(癌508例,良性1,433例)を対象とした.初診時触診, MMG, USで癌または癌疑いと診断したものを陽性,良性または良性疑いと診断したものを陰性として診断能を分析した.また全乳腺疾患に対する診断能と比較した.(結果) 2cm以下乳癌に対する触診, MMG, US単独での正診率は全乳癌と比較して有意に低下した.しかし3者による総合診断では有意差はなかった.総合診断による2cm以下乳腺疾患のfalse positive, false negative例の内容は全症例のそれと比べて差異はなかった.(結論) 2cm以下の小病変に対しては触診, MMG, USによる総合診断が必要であり,更に積極的な生検が勧められる.
  • 河野 辰幸, 吉野 邦英, 滝口 透, 山崎 繁, 妙中 俊文, 下重 勝雄, 鈴木 知行, 永井 鑑, 遠藤 光夫
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1784-1790
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1978年以降の非開胸食道抜去術症例のうち,胸部食道に病変の全部または一部が存在する16例を対象として,本術式の安全性と胸部食道癌に対する適用の妥当性について検討し,以下の結果を得た. (1)胸部食道病変例においても外膜変化の強い例を除けば,安全に本術式を施行し得る. (2)開胸切除に比べ,より低肺機能例, poor risk例にも適用することができ,これにより,切除率を高め得る可能性がある.とくに,開胸が困難と判定される例のうち,深達度がepないし少なくともmmに止まると診断されるものにおいては,根治切除となる可能性が高く,一応考慮すべき治療法と考えられる. (3)poor riskや遠隔臓器転移などで,開胸切除が困難あるいは不適当と判断される他の胸部食道癌症例においても,癌のreductionや出血などの合併症防止という立場から,本術式適用の意義が認められる場合もあるが,その際は予後や術後のquality oflifeまで考慮し,一層慎重に他の療法と比較検討すべきである.
  • 大下 裕夫, 田中 千凱, 伊藤 隆夫, 坂井 直司, 種村 広巳, 佐治 重豊, 坂田 一記
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1791-1796
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Borrmann 4型スキルス胃癌74例の臨床病理学的検討を行った. 1)肉眼型は巨大雛襞をともなうlinitis plastica型,大ぎさは6~15cm大の腫瘍が多かった. 2)胃全摘, R2以上のリンパ節郭清が77%,胃周囲臓器合併切除が55.4%に行われた. 3)組織型は低分化腺癌,深達度はse以上が多かった. 4)肝転移は5.4%と低率であり,また,腹膜播種は35.1%であったのに対し,リンパ節転移は81.1%と高率にみられた. 5)切除胃断端の癌浸潤陽性率は23.0%と高かった. 6)スキルス胃癌全体の予後は1年, 3年, 5年生存率がそれぞれ59.5%, 16.1%, 9.3%とぎわめて不良であった.治癒切除例と非治癒切除例との比較でも1年生存率(p<0.001)以外では有意差はみられなかった.リンパ節転移陽性例の予後は不良であった.腹膜播種陰性例では1年生存率こそ75.0%と高かったが,それ以降の予後は不良であった. 7)治癒切除例の再発形式は腹膜再発が最も多かった.
  • 特に下部領域の早期癌と左胃大網動脈に沿うリンパ節(〓)転移について
    竹吉 泉, 宮本 幸男, 大和田 進, 竹下 正昭, 川井 忠和, 泉雄 勝
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1797-1801
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    各領域胃癌の組織学的深達度別リンパ節転移状況について比較検討し,下部(A)領域癌の〓根部郭清縮小の可能性について検討した.
    昭和55年8月から5年5カ月間の単発胃癌309症例を研究対象とした. A領域限局癌の〓への転移率を見ると,早期癌では全く転移を認めなかった. s(+)の症例では, 16.7%に転移が認められた. A領域限局早期癌の1群リンパ節への転移率は〓で1.9%に転移を認め, (6)へは5.8%であった.一方s(+)では, 〓33,3%, (6)へは45.8%で〓の16.7%と比較し,いずれも高い転移率を示した. A領域限局早期癌の2群リンパ節転移率はそれぞれ1.9%の転移を認めた.以上より, A領域限局癌の手術においては肉眼的s0では〓根部の郭清は必要ないと考えられる.しかし2群リンパ節の重点的郭清は必要である.一方肉眼的s(+)症例では〓の根部, (12), (13), 〓の郭清をも必要と考えられた.
  • 浅木 信一郎, 遠藤 権三郎, 吉田 悟, 田中 聡一, 松本 滋彦, 岡田 賢三, 松本 昭彦
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1802-1810
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    癌患者の開腹手術の術後に上昇するlactate dehydrogenase (LDH)アイソザイムはLDH4,5であり,この由来と機序について検討した.そして,術後の血清LDH値とアイソザイムの上昇が手術中の潜在的な肝障害の程度を反映している可能性について検討した.
    対象は胃癌と結腸直腸癌の開腹手術症例35例で,術前,術後帰室時から術後第1日までほぼ6時間毎,さらに術後第3, 5, 7, 14日,術後1カ月目に測定した.
    術前の胃癌,結腸直腸癌のstage IV以上の症例には,血清LDHおよびLDH4,5の比率が高い症例があったが, stage I, II, III群とは有意差はなかった.
    胃癌のstage I, II, III群およびstage IV群と結腸直腸癌のstage IV, V群の術後の血清LDH5は,帰室時の値が最高となり一過性に上昇した.その後の減少は,胃癌stage I, II, III群の方が胃癌stage IV群よりも遅かった.
    胃癌stage IV群および結腸直腸癌のstage IV, V群で上昇したLDH5は,胃癌のstage I, II, III群のLDH5と由来と機序が異なっていると考えられ, stage IV以上の症例の術後のLDHおよびLDH5の上昇は癌細胞由来であり,胃癌のstage I, II, III群の上昇は主に肝細胞由来であると推定された.
    したがって,胃癌および結腸直腸癌のstage III以下の症例に関しては,帰室時の血清LDHおよびLDH5の上昇が手術中の肝障害の程度を反映していると考えられた.
  • 吉田 竜介, 益子 邦洋, 大塚 敏文, 光島 徹
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1811-1816
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去2年8カ月の間に,亀田総合病院外科に入院した腸閉塞患者は68名で,そのうち36症例を対象として大腸内視鏡検査を施行し,その意義を検討した.その内訳は男性20例(55.6%),女性16例(44,4%)で平均年齢は60.4歳であった.大腸各部位における到達率は回盲部において23例(63.9%)と半数以上であり,挿入時における合併症は皆無であった.よって腸閉塞症において比較的禁忌とされている本検査法は,注意深い挿入手技をもってすれば安全に施行できることが示唆された.また腹部手術の既往に関らずS状結腸軸捻症は5例で,全例内視鏡的に解除しえた.本検査施行後に腹部X線,自他覚症状等にて何らかの形で改善傾向を示した例は17例(47.2%)であった.また腹部理学的所見に乏しいイレウス症例に本検査を施行し,虫垂開口部の性状より虫垂炎と診断しえた例など,その治療面及び診断面において有用性が認められた.
  • 橋本 直樹, 琴浦 義尚, 芦田 寛, 石川 羊男, 宇都宮 譲二
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1817-1820
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    肝硬変の重症度を判定するにあたって,小沢らは, 50g OGTTの血糖曲線を検討し,耐糖能と重症度との関連について報告している.しかし, OGTTの場合,胃排泄時間に影響され,かつ血糖曲線の型にしか分類できない欠点がある.そこでわたくしどもは,最近経験した18例の食道静脈瘤合併肝硬変症に,静脈内ブドウ糖負荷試験(iv-GTT)及びOGTTを施行し予後を検討した. OGTT patternは全例parabolic typeであったが, iv-GTTの血糖消失率(K-glucose)は1.26~3.46と症例により,バラッキがみられ, K-glucose<2.0の症例では,外科的治療(遠位脾腎静脈吻合)をした場合,有意に肝不全死する傾向がみられた.以上よりiv-GTTのK-glucoseは肝の重症度を鋭敏に反映するものと考えられた.
  • 佐々木 一晃, 白松 幸爾, 平田 公一, 平池 則雄, 佐藤 均, 佐藤 誠, 浦 英樹, 早坂 滉
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1821-1825
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    10年間に経験した肝外胆管癌は74例であった.これらにおいて全体の概要と共に,主に切除不能例について検討した.治癒切除における3年及び5年生存率は,各々54%, 35%であった.非治癒切除の3年生存率は13%である.切除不能例においては,黄疸軽減後に内瘻術を主に行ってきたが2年以上の生存は認められていない.しかし,内瘻術の方法において生存率に差が認められた.今回主に検討した内瘻術は,.胆管・空腸吻合術とT-tubeを用いたbypass手術であった.前者では術後平均生存期間が5ヵ月であったが,後者では8.6ヵ月とやや長期の生存を認めた.また,前者では1年以上の生存は認めていないが,後者で1年生存率30%と良好であった.
  • 佐藤 太一郎, 七野 滋彦, 片山 信, 山本 英夫, 牧 篤彦, 河村 健雄, 鈴木 秀昭, 水野 伸一
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1826-1832
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹壁瘢痕ヘルニアは開腹術後の遅発性合併症である.最近10年間に経験した31症例を検討して次のような結果を得た.
    男5例,女26例で女性に多く,年齢別では60歳代が11例で最も多かった.部位は上腹部正中5例,下腹部正中13例,右下腹部10例,その他5例であった.開腹術から1年以内に発症した10例と, 10年以上経過して発症した13例を比較すると,両群のヘルニア発生要因は異るように思われた.
    ヘルニア内容を知るためには従来の検査に加えてコンピュータ断層撮影(CT)が有用であった.手術術式はヘルニア内容が発生時期など,症例によって差はあるが, 1. 嚢は切除せず利用するよう内飜を考える. 2. 筋膜の縫合は成るべく横縫い. 3. 補綴または補強を必要とするときは自家筋膜を使用する.此の方針で実施し,好結果を得た.
  • 広瀬 弘明, 岡部 郁夫, 森田 建
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1833-1839
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小児リンパ管腫は日常の小児外科診療においてしばしば遭遇する疾患であるが,その治療は現在のところ画一的なものではなく,治療に難渋する症例も少なくない.
    そこで小児リンパ管腫88例(101カ所)について検討した.頸部発生例(41例)の頻度が最も高く,その殆どがcystic hygromaであり,うち27%の症例は縦隔,口腔内,腋窩,上肢などにもリンパ管腫が進展併存していた.また27%の症例は感染,呼吸困難,嚥下障害など危険な合併症を伴って来院しており緊急的処置が必要であった.腹部発生例(9例)のうち4例はイレウス状態で来院している.治療は77例に外科的摘除がなされ,うち23例はブレオマイシンが併用された. 7例はブレオマイシンのみで治療され, 4例は自然消退をみている.これらの経験より治療法の選択,治療開始時期は,リンパ管腫の発生部位周囲への進展程度,合併症,年齢などを考慮する必要がある.
  • 症例報告およびその疾患概念についての考察
    松崎 圭祐, 大西 一久, 溝淵 俊二, 山城 敏行, 小越 章平, 田宮 達男, 園部 宏, 原 弘
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1840-1846
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    カルチノイドは1907年,小腸原発小腫瘍に対しOberndorferが提唱した疾患概念であるが,近年,胸腺や卵巣等,消化器以外の症例報告が増加している.今回,その臨床所見および摘出甲状腺腫瘍組織を光顕,電顕,免疫組織化学的に検索した結果,甲状腺原発カルチノイドと考えざるを得ない症例を経験した.
    症例は76歳,女性.主訴は前頸部腫瘤で顔面紅潮,眩量,下痢等のカルチノイド症候群を思わす症候を伴っていた.甲状腺,副甲状腺機能に異常なく,血中カルシトニン値は正常であった.昭和60年6月15日,甲状腺左半切除術を施行し,術後経過は順調で,顔面紅潮等の緒症候は軽快した.
    検索し得た限りでは甲状腺原発カルチノイドと診断された症例は全く認められず,甲状腺におけるカルチノイドという疾患概念の存在のみでなく,いわゆるC細胞由来甲状腺腫瘍の分類そのものが不明確であることが判明した.そこで若干の文献的考察を加え報告する.
  • 井上 晴洋, 杉原 国扶, 竹村 克二, 桜沢 健一, 野坂 俊壽, 山下 哲男, 山際 明暢, 村瀬 尚哉, 波多野 誠, 毛受 松寿, ...
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1847-1853
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当院で過去5年間に経験した11例の術後心筋梗塞症を術後48時間以内に発症した早期発症群と48時間以降に発症した後期発症群にわけ,コントロール群との間でリスクファクターや発症までの時間をはじめとする11項目について比較検討した.その結果, (1) 3群のあいだでは,年齢,性別,麻酔方法,輸血量に関しては明らかな差を認めなかった. (2)早期発症群の予後が後期発症群に比較して有意に良好であった(p<0.01). (3)原疾患では後期発症群に悪性例が多く,手術時間も後期発症群において長い傾向がみられた.(4)術後に心筋梗塞をおこした患者が基礎に呼吸器障害を有する場合には,死亡率が有意に高く(p<0.01),呼吸器障害の有無が術後心筋梗塞症の予後をきめる重要な因子の1つであった.
  • 栗原 英樹, 久保 義郎, 三井 秀也, 小野 一広, 草井 孝志, 妹尾 雅明, 諸国 眞太郎, 清水 康廣, 内田 發三, 寺本 滋
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1854-1858
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    いわゆる孤立性腸骨動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,その破裂例は予後が不良で,積極的な手術がすすめられている.最近, DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤に合併した孤立性の両側総腸骨動脈瘤および内腸骨動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は75歳の男性で, 2年前に3ヵ月の間隔をおいて急性大動脈解離によると考えられる背部激痛を覚えた事があったが,今回右下腹部腫瘤を指摘され来院した.腫瘤は拍動性で横径3.5cm大であり,右総腸骨動脈瘤と判明,血管造影により左総腸骨動脈瘤も認めた.左腹膜外到達法により容易に瘤切除・Y型人工血管を置換したが,術中に両側内腸骨動脈瘤も認められたためこれらを切除し,直型人工血管で再建した.解離性大動脈瘤は慢性期にあり症状もなく,手術の適応としなかった.孤立性腸骨動脈瘤は腹部大動脈瘤と比較すると破裂の危険性が高いとされ,直径3cm程度でも診断がつき次第,積極的に手術を行うべきである.
  • 馬場 雅人, 佐々木 孝
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1859-1864
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,患者の高齢化及び悪性腫瘍に対する治療成績の向上にともない動脈硬化性心血管病変と悪性腫瘍を合併する症例が増加している.当施設においても1985年5月より1986年4月末までの1年間に7症例を経験したので検討を加えた.
    症例は全例男性で,悪性腫瘍の内訳は,胃癌4例,前立腺癌2例,腎癌1例であった.これら症例に対し, A-Cバイパス術1例,腹部大動脈瘤切除術2例,胸部大動脈瘤切除術1例,腹部大動脈-大腿動脈人工血管バイパス術4例,大腿-膝窩動脈人工血管バイパス術1例の計10回の外科治療を施行した.早期死,遠隔死なく全例症状の改善を得た.
    悪性腫瘍がterminal stageでない限り,患者の延命及びquality of life向上の目的で合併する動脈硬化性病変に対しても積極的に外科治療を施行すべきと考える.
  • 横田 隆, 高橋 俊雄, 添野 武彦, 成沢 富雄
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1865-1868
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Nonrotationを伴った十二指腸平滑筋肉腫の1例を報告した.患者は39歳,男性で心窩部の小児頭大の腫瘤を主訴に来院した.胃十二指腸透視では十二指腸下行脚の外方への軽度圧排を認めた.また十二指腸水平脚は正中より左方へは越えず,注腸造影では結腸は左側に,小腸は右側に存在し, nonrotationの像を呈していた.選択的腹腔動脈造影では腫瘍は上膵十二指腸動脈より栄養されており,腫瘍血管濃染像を認めた.エコーでは中央が空洞で,厚いエコーレベルの高い腫瘍壁を認めた.十二指腸の粘膜下腫瘍と診断し,手術を施行した.手術所見では十二指腸の第1部より発生した大きな腫瘤を認め,癌性腹膜炎を伴っていた.腫瘤摘除のため,胃亜全摘術を施行した.組織学的所見では腫瘍は平滑筋肉腫と診断された.
  • 清水 哲, 平岡 裕, 谷田 理, 周藤 秀彦, 渡辺 俊一
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1869-1873
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸重積と脳転移を合併した原発性空腸癌の1例を経験したので報告する.症例は55歳の男性で左季肋部痛を主訴として来院した.消化管造影検査では異常がみられず,腹部CTにて膵尾部に腫瘤像がありCA19-9の上昇を伴ったため膵原発腫瘍が疑われた.入院後間もなく腸閉塞となり緊急手術を施行したところTreitz靱帯より約100cm肛門側の空腸に腸重積を合併した亜有茎性の腫瘤が認められた,病理組織検査では未分化型腺癌および腸間膜リンパ節転移がみられた.他に膵尾部にも転移がみられた.術後頭痛を訴え頭部CTにて腫瘤像を指摘されたため腫瘍摘出術を受けたが2カ月後に癌死した.
    原発性小腸癌は比較的稀な疾患でありその術前診断は容易でなく,また腸重積や脳転移を合併する事は稀である,これらの点を中心にして若干の文献的考察を行った.
  • 特に術式と術後栄養管理について
    岡 敬二, 内田 雄三, 柴田 興彦, 友成 一英, 藤島 宣彦, 葉玉 哲生, 森 宏之, 中下 誠郎, 藤岡 利生, 首藤 龍介
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1874-1879
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    妊娠7カ月目に下痢で発症し,さらにイレウス,うっ血性心不全,大量下血を合併した,回腸大腸Crhon病に対し,帝王切開術,結腸全摘術および回腸大腸吻合術を施行し,母子共に救命し得た.術後の栄養管理にはTPNを行ったが,食事への移行期にはEDによる経腸栄養が有効であった.このような症例を救命するためには,外科,産婦人科,内科,小児科の緊密な連帯が必要と考えられた.
  • 尾関 豊, 鬼束 惇義, 林 勝知
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1880-1885
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    広汎な大腸潰瘍性病変を有する腸型Behçet病の1例を報告した.
    症例は32歳,男性.約1年前に口腔内アフタ,虹彩毛様体炎,網膜脈絡膜炎をきたし,不全型Behçet病と診断された. 1カ月前より眼症状悪化し眼科入院中,右下腹部痛,下痢をきたし当科に転科した.右下腹部に腹膜刺激症状を認めたが,腹部, X線上free air, niveauおよび拡張腸管ガス像を認めないことから保存的に経過観察したところ,徐々に軽快した.発症3週後に行った注腸検査にて上行結腸からS状結腸にかけて最大径1.5cm以下の類円形なpunched out潰瘍を多数認めた.
    左側結腸に潰瘍を有する腸型Behçet病を文献的に検索し,その特徴について述べた.
  • 野中 道泰, 吉田 晃治, 才津 秀樹, 浦口 憲一郎, 麻生 公, 上田 俊明, 日高 令一郎, 三好 弥寿彦
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1886-1891
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸絨毛腺腫は本邦では比較的稀れな疾患とされてきた.その特異的な肉眼的形態及び癌化率の高さ,さらに電解質異常や脱水症を伴う性質の腫瘍として注目を集めている.今回われわれは大腸絨毛腺腫3例を経験したので,本邦報告例72症例を集計し文献的考察を加えて報告する. (1)男女比は29:43と女性に多く認められた. (2)平均年齢62.2歳. (3)下血,粘液排出,下痢を主訴とするものが多く83.3%をしめる. (4)発生部位では直腸60例(83.3%), S状結腸4例(5.6%),横行結腸4例(5.6%)の順であった. (5)60.3%に悪性化が見られ腫瘍径5cm以上では72.7%に悪性化が見られた. (6)直腸絨毛腺腫49例中32例(65.3%)が直腸癌に準じた手術が行なわれ,その内の25例(78.1%)が直腸切断術であった.しかし直腸切断術症例中浸潤癌は10例(40.0%)にすぎないことを考えると,浸潤癌以外の症例での直腸切断術に関しては,術式の選択は慎重でなければならない.
  • 固武 健二郎, 小山 靖夫, 尾形 佳郎, 島村 香也子, 鈴木 恵子
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1892-1898
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸結核に併存した大腸癌の1例を報告した.症例は56歳女性で,腸閉塞のための緊急手術を行い,手術所見より腸結核を疑い,術中組織診断で癌の併存が確認されたため右半結腸切除術を施行した.著しく変形した回盲部のバウヒン弁近傍に全周性・輪状の潰瘍性病変があり,組織学的には漿膜下まで浸潤する粘液癌であった.これに連続した結腸にはmucosal bridgeおよび多数の潰瘍瘢痕を伴う粘膜萎縮帯がみとめられ,結核菌・乾酪肉芽腫は同定されなかったものの,陳旧性腸結核に相応する病変であると考えられた.
    本併存例の本邦報告例34例を集計し,自験例と合わせて臨床病理学的に検討した.
  • 金井 道夫, 近藤 成彦, 梛野 正人, 栗木 浩, 向山 博夫, 森 光平, 丹野 俊男
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1899-1902
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.昭和60年12月17日,左季肋部痛を主訴に当院を受診した.諸検査により,胃に直接浸潤した横行結腸癌と術前診断した.
    昭和60年12月27日,胃切除,膵体尾部切除,脾摘出術,横隔膜部分切除を伴う左半結腸切除術を施行し,根治的に切除した.切除標本では,胃壁に浸潤し,胃結腸瘻を形成した120mmの横行結腸腫瘍を認めた.組織学的には,胃粘層に浸潤した乳頭管状腺癌であった.
    術後16カ月の現在,再発の兆候なく社会復帰している.
    Smithらは,胃結腸瘻を形成した結腸癌には,悪性度の低いものが多く,リンパ節転移が少ないと報告している.本邦報告例9例でも,同様の傾向を認めた.
  • 竹村 克二, 岡部 聡, 中島 和美, 金子 慶虎, 遠藤 光夫
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1903-1908
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌の骨盤内局所再発に対し,仙骨合併切除を含む腫瘤切除を行った3例を経験した.
    症例1は70歳男性.低位前方切除術後3年で仙骨前面での再発が確認され,第3仙椎以下の合併切除と残存直腸の切断術を行った.
    症例2は50歳男性. Miles手術後1年7カ月で尾骨前面の前面の再発が診断され,第4仙椎以下の切除が行われた.
    症例3は53歳女性でHartmann手術後1年1カ月で直腸断端上後方での局所再発が確認され,第3仙椎以下の仙骨と残存直腸と腟の合併切除を行った.
    骨盤内局所再発に対する再切除の成績は良好とはいえないが,生存期間の延長,局所症状の軽減には役立つものと考えられた.術後早期より定期的な検索を行い,より早い時期で再発を診断し,最小の侵襲で再切除を行うことが大切である.仙骨の合併切除に関しては,術後大きな障害もなく,膀胱機能についても良好な結果が得られている.
  • 神谷 順一, 黒川 善栄, 秋山 三郎
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1909-1913
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は26年間にわたる便秘と便失禁を主訴とする76歳女性である.肛門縁から6cm口側の直腸狭窄と脂肪腫様の巨大な骨盤内腫瘤を指摘され, 1983年11月直腸切断術,骨盤内腫瘤摘出術を施行した.開腹所見で回腸下部に輪状狭窄が多発していたため,回盲部切除も行った.病理組織学的検索で,直腸狭窄は輪状潰瘍瘢痕によるものであり,潰瘍は成熟した脂肪組織からなる骨盤内腫瘤に穿通していることが判明した.直腸狭窄の肛門側には広範な扁平上皮化生が認められた.検索しえた限りではこのような症例の報告はない.本例の特異な所見は, 26年前に生じた穿通性直腸潰瘍に起因したものと思われる.
  • 上辻 章二, 山村 学, 浜田 吉則, 広実 伸朗, 横田 直也, 奥田 益司, 山本 政勝
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1914-1918
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    9歳男児,季肋部痛,発熱,黄疸を主訴として入院.胆石症を合併した先天性球状赤血球症と診断され,摘脾,胆摘術を行ない良好な結果が得られた.
    本症には胆石症を合併していることを考慮し,若年者といえども胆石症の検索を行なう必要があるとともに,逆に,若年者で胆石が認められた場合,先天性胆道異常や感染症などのほかに本症も念頭におくべきである.
    本邦における先天性溶血性貧血のうちで先天性球状赤血球は重要な疾患である.
    先天性球状赤血球症に合併する胆石症に関して文献的考察を含め報告した.
  • 村上 厚文, 小泉 和雄, 小泉 蓉子
    1987 年 48 巻 11 号 p. 1919-1923
    発行日: 1987/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵嚢胞の中で日常われわれが最も遭遇することが多い仮性嚢胞は,外傷や膵炎後に嚢胞が形成されるものが大部分である.嚢胞の感染,出血,穿孔など重篤な合併症をきたしやすいこと,自然消失する可能性があること,そして悪性化は少ないことなどの理由から外科的治療方針は議論が多く,むしろ保存的療法にゆだねられている場合が多い.この中で特に重篤な感染を伴った症例の検討は少なく,保存的治療を続けるべきか,また手術に踏み切る場合の時期と手術法の選択がきわめて重要である.最近我々は,腹部鈍的外傷後に化膿性仮性膵嚢胞をきたした症例に対し,外瘻術後,二期的に膵体尾部切除,胃全摘,脾摘術を施行し良好な経過をとった症例を経験したので,若干の考察を加え報告する.
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