日本臨床外科医学会雑誌
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膵性腹水の1例
牛島 聡杉山 茂樹若狭 林一郎村田 修一清崎 克美
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1987 年 48 巻 12 号 p. 2101-2105

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抄録

膵性腹水は良性膵疾患に起因して大量かつ慢性的な腹水貯留をみるもので,腹水中アミラーゼ高値,腹水中蛋白高値を診断根拠とする疾患である.膵性腹水の1例を経験したので報告するとともに本邦報告27例を集計し文献的考察を加えた.
症例は63歳の男性で腹部膨満を主訴として入院した.飲酒歴を有した.血清アミラーゼ上昇(2,3041U/l),腹水中アミラーゼ高値 (6,300IU/l),腹水中蛋白高値(3.4g/dl)から膵性腹水と診断した. 1カ月後のエコー, CTで大量の腹水とともに膵嚢胞が描出された.膵管造影,嚢胞造影では膵管と嚢胞の交通や内膵液漏は認めなかった.高カロリー輸液,腹水穿刺など内科的治療を4週間行ったが改善がみられず,昭和60年11月24日,嚢胞胃吻合術を施行した.術後,腹水,高アミラーゼ血症は速やかに消失し, 16カ月経た現在,健在である.

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