日本臨床外科医学会雑誌
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先天性動静脈瘻が原因となり発生したと思われる動脈瘤の1例
佐藤 恭介海老根 東雄田村 進李 美根雄
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キーワード: 動静脈瘻, 動脈瘤形成
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1988 年 49 巻 1 号 p. 139-142

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抄録
先天性動静脈瘻が原因となり動脈瘤が発生する症例は比較的稀である.前胸部から頚部にかけて,広範囲にわたり先天性動静脈瘻が存在し,それから腋窩部に動脈瘤が発生し,増大した1例について報告する.症例は65歳女性で肝疾患にて入院中,拍動性の右腋窩腫瘤に気付き,その後これが急激に増大した. Digital subtraction angiography (DSA)にて広範囲の動静脈瘻及び背側胸動脈,外側胸動脈が流入動脈となり腋窩部に発生した動脈瘤と診断した.手術にて右鎖骨下動脈から分岐した2本の流入動脈と,同静脈に還流する静脈を結紮,摘出した.本例は,動静脈瘻による高血流に起因した動脈壁のストレスが,動脈壁の変性を来し発生したものと考えられた.動静脈瘻を根治的に治療することは困難なことが多いが,本症の残存した部分にも,外科的あるいは動脈塞栓術などが必要になるものと考えられる.
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