抄録
手術前に診断できた閉鎖孔ヘルニアの1症例を報告し, 1926年から1986年8月まで本邦報告例246例を集計し文献的考察を行った.
症例: 78歳女性.下腹部痛.左大腿内側部のしびれ感により当院受診.下腹部膨隆し, Howship-Romberg徴候は陽性.腹部単純X線写真で鏡面形成像があった.閉鎖孔ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断し緊急手術を施行し,治癒した.
閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患で,術前診断がむずかしくイレウスとして緊急手術となる症例が多い.しかしHowship-Romberg徴候は約80%に認められるので,これを確認して診断することが重要であると思われた.