日本臨床外科医学会雑誌
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術前に浸潤範囲を確定し治癒切除が可能であった広範囲胆管癌の1例
宮川 秀一三浦 馥川瀬 恭平中村 従之山川 真堀口 裕爾北野 徹
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1988 年 49 巻 12 号 p. 2394-2399

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抄録

胆管癌の外科治療上,切除断端の癌遺残が大きな問題となる.とくに,肝門部胆管癌や肝門に浸潤をみる症例では,通常の胆管切除で対応しうるか,あるいは左右どちらの肝切除を行うか,さらに局状葉切除を必要とするか否かなどの決定が必要となる.今回,われわれは,中部胆管の肝門部浸潤に対し術前経皮的胆道鏡にて浸潤範囲を診断し,尾状葉全切除を含む拡大肝右葉切除兼膵頭十二指腸切除で治癒切除を行いえた症例を経験したので報告する.患者は52歳,女性右季肋部痛と黄疸にて入院.経皮的胆管ドレナージ後,造影で中部胆管に約1.5cmにおよぶ壁の不整と硬化,さらに肝門部胆管に軽度狭窄をみた.経皮的胆道鏡下の直視下生検では,中下部胆管から左肝管基始部,右肝管第一次分岐部まで腫瘍細胞を検出した.左肝管は正常粘膜であったので左外側区域を温存する術式を選択しえた.
胆管癌治療上意義ある症例と考え報告した.

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