日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
全胃幽門輪温存膵全摘による慢性膵炎の1治験例
長谷川 浩高田 忠敬安田 秀喜内山 勝弘土屋 繁之三須 雄二斉藤 康子四方 淳一
著者情報
キーワード: 膵全摘, 全胃温存, 膵切除術
ジャーナル フリー

1988 年 49 巻 12 号 p. 2406-2411

詳細
抄録

慢性膵炎にて膵体尾部・脾切除後5年を経過した後,残存膵頭部に膵石を伴う慢性膵炎に起因する疼痛を主訴に来院し,全胃幽門輪温存膵全摘術を行った62歳男性の1例について報告する.自験例では残存膵を全摘し再建は十二指腸十二指腸端々吻合によって行った.術後1日19単位のインスリンを投与しているが,術後8週で体重は術前値に回復した.糖負荷試験にては術前と著変はみられなかった.術後のD-キシローステストでは2.8g/5hと脂肪吸収は軽度の障害をみた.なお,術後の胃液検査ではBAO, MAO共に値の増加をみたが胃内視鏡ではびらんや潰瘍所見をみなかった.膵全摘における全胃幽門輪温存は食事摂取量が充分にとれて満足感があること,かつ術後の体重増加がみられることなどに意義がある.これまで膵全摘においては胃切除を伴うものが通常であったが,最近欧米では全胃ならびに全十二指腸を温存した術式も報告されている.本術式はわが国における全胃温存による膵全摘の第一例と考え報告した.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top