1988 年 49 巻 12 号 p. 2422-2426
Stage III, IVの尾仙部卵黄嚢癌2例をPVB療法で寛解させることができた.症例1は1歳6カ月女児で,肺,肝転移を伴い,症例2は1歳9カ月女児で両側そけい部リンパ節転移を伴っていたが同療法3ないし4クール終了後AFPの著明な低下を見,腫瘍切除が可能となった.寛解後の維持療法としては,前者はCDDPにADMを,後者はCDDPにVBL, ADMを使用し,現在disease-freeの状態である.維持療法としてVAC, pulse VAC療法を使用した報告も見られるが, PVB療法のなかでもCDDPの有効性が大であること,われわれの進行神経芽腫治療プロトコールでは腎機能,聴力に注意しながら総量1,000mg/m2程度まで使用していることから維持療法としてもCDDPを使用した.
尾仙部卵黄嚢癌でのPVB療法の有効性が確かめられたが,同時にCDDPを中心とした強力な維持療法を行うことでより有効な治療法になるものと思われる.