日本臨床外科医学会雑誌
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恥骨結合切離開大,腹膜外側方郭清先行による骨盤内臓器亜全摘術を行った1例
落合 正宏船曵 孝彦天野 洋杉上 勝美藤田 真司福井 博志亀井 克彦松原 俊樹山口 久二渡 久智長谷川 茂新井 一史
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1988 年 49 巻 5 号 p. 922-927

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抄録

骨盤内臓器全摘術またはこれに準ずる手術の際に,開腹に先立ちまず腹膜外経路にて側方郭清を行い,次いで恥骨結合を切離開大して骨盤腔を側方に展開する方法を開発したが,今回, 55歳の女性の巨大S状結腸癌,子宮膀胱浸潤例に本法を施行し,有用性を検討した.本症例は小児頭大の腫瘤を形成し,骨盤内腔のほぼ全域を占め,可動性が乏しいため,術前には切除の困難性が示唆されたが,本術式により十分かつ容易に切除し得た.
腹膜外側方郭清はリンパ節を含む脂肪織のen-bloc切除が行い易く,視野展開が良好で,手術時間の短縮がえられる等有利な点が多かった.また恥骨結合切離開大法は,骨盤側壁の外方への展開により深部操作が容易となること,および下部尿路の処理が直視下で行いうることなどの利点を有した.両者の組み合わせによる骨盤内手術はまた報告をみないが,巨大腫瘤,狭骨盤,肥満等の症例では極めて有用と考える.

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