日本臨床外科医学会雑誌
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開腹手術時におけるカンレノ酸カリウムの血清Mg濃度に及ぼす影響
菊地 秀樹〓野 繁雄劔物 修
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1988 年 49 巻 7 号 p. 1131-1134

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抄録

侵襲の大きな手術では,術中及び術後にかけて高アルドステロン状態となり, Mgの排泄が増加して血清Mg濃度が低下することが指摘されている.そこで,全身麻酔下の消化器手術症例51例を対象として,術中及び術後3日目までの血清Mg濃度の推移を測定し(対照群27例),またカンレノ酸カリウム(ソルダクトン®)の血清Mg濃度に対する効果について(投与群24例)検討した.
対照群の平均血清Mg濃度は,麻酔導入前1.74±0.37mg/100mlであったものが麻酔終了時より低下し,術後2日目には1.50±0.36mg/100mlと最低となり,術後3日目も麻酔導入前と比較すれば有意に低下したままであった.さらに, 1.3mg/100ml以下のいわゆる低Mg血症が2例認められた.これに対し投与群では,麻酔導入前の1.77±0.28mg/100mlから術後2日目には1.66±0.25mg/100mlまで低下したが,術後3日目には1.77±0.27mg/100mlとほぼ術前値に回復した.また低Mg血症はいずれの症例でも認められなかった.
これらの結果より,開腹手術時には血清Mg濃度は低下し,この血清Mg濃度の低下はカンレノ酸カリウムにより抑えられることが示唆された.

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