1989 年 50 巻 10 号 p. 2123-2128
最近,Exulceratio simplex (Dieulafoy潰瘍,Es)及びEs類似疾患は,内視鏡的に診断し内視鏡的に止血されることが多くなってきた.しかし,その予後についての論文は少なく,内視鏡的止血法の臨床上の立場については,不明な点も多く残されている.今回,自験例16例を中心に,治療と予後について検討を加えた.
自験例3例は,胃切開により出血源を確認の後,各々の症例に応じた手術を行い(胃亜全摘術,楔状切除術,胃壁縫縮術),いずれも止血に成功した.残り13例に対しては内視鏡的止血法(純エタノール局注法:ETH法)にて止血に成功した.これら内視鏡的止血の行われた13例のうち,4例が死亡したが,すべて併存する重篤な合併症によるものであった.残り9例は止血後25ヵ月から59ヵ月に亘り,再出血を認めない.この結果はEs及びEs類似疾患に対する内視鏡的止血法(ETH法)の価値の一端を証明するものであろう.