1989 年 50 巻 11 号 p. 2313-2316
食道静脈瘤の外科的治療として,当教室では遠位脾腎静脈吻合術(DSRS)を第一選択として行っている.DSRSの肝に対する影響を検討するにあたってDSRSを施行した食道静脈瘤合併肝硬変症10例に対して術前,術後に経静脈的ブドウ糖負荷(iv-GTT)の血糖消失率(K-glucose),インスリン(IRI),膵グルカゴン(IRG),フィッシャー比を検討した.K-glucoseは術前2.3±0.2,術後2.5±0.2となった.Fisher比も術前1.58から術後2.0と改善した.選択的シャントによる側副血行路のdevascularizationに伴うportal systemic shuntの減少により,末梢血レベルでのIRI動態では,術後は術前に比し低い傾向がみられた.以上よりDSRSはselective shuntが保たれ,糖代謝,アミノ酸代謝においても良好な結果が得られた.