日本臨床外科医学会雑誌
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経腹的な縦隔ドレナージで治癒に導くことができた特発性食道破裂の1例
西 律曽我部 俊大清水 勉
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1989 年 50 巻 11 号 p. 2388-2392

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抄録

66歳,女性の飲酒後の嘔吐が誘因となった特発性食道破裂の1例に対し経腹的な縦隔ドレナージと胃瘻造設術を行い治癒に導くことができたので報告する.本症は本邦でも既に200例以上の報告があるが,やはり診断・治療が遅れると救命困難な重篤な疾患である.本症に対する手術は通常開胸が行われており,自験例のような経腹的な縦隔ドレナージのみで治癒せしめ得た症例は少ないと思われる.自験例の如く破裂部が胸部食道下部で縦隔胸膜が穿破されていない症例では経腹的アブローチも考慮されるべき術式と考えられた.本症の診断においては胸部X線写真と食道造影が特に重要と考えられた.また自験例で術後生じた食道気管支瘻に対し血液凝固XIII因子製剤が有効であったが,食道破裂部の一次縫合閉鎖後の縫合不全に対して本剤が有効であったとの報告もあり,本因子が低下している場合には積極的に投与すべきと考えられた

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