抄録
近年,乳癌検診の普及と針生検法の導入によって,癌との鑑別が難しい乳管内増殖性病変がしばしば発見されるようになった。このような状況の中でWHO の乳腺腫瘍分類が2003年と2012年に大きく改変され,乳管内増殖性病変の分類が整理された。乳管内増殖性病変は,明らかな良性変化であるusual ductal hyperplasia(UDH),良悪境界病変であるflat epithelial atypia(FEA),atypical ductal hyperplasia(ADH)と悪性病変であるductal carcinoma in situ(DCIS)に分類されている。これらの組織学的鑑別のポイントとしては,上皮細胞が形成する構造パターン,上皮細胞の形状,核の異型性,病変の広がりなどが挙げられている。また,ADH はDCIS と診断するには量的もしくは質的に足りない病変であり,量的にはDCIS と同等の完全な異型病変が2個未満もしくは2mm 以下の場合,質的にはDCIS に近い像を示すものの不完全な場合と定義されている。一方,DCIS は,核の異型性や壊死の有無によってlow,intermediate,high grade に分類することができる。最近ではgrade によってDCIS をlow risk とhigh risk に分けて,low risk に対してactive monitoring を行うという臨床試験が英国で始まっている。結論が出るまでにはかなりの年月を要するが,low risk のDCIS には手術治療を行わないという時代の来ることが期待されている。