日本臨床外科医学会雑誌
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Sipple症候群の1例
梅田 裕之森田 雅也田端 正己島村 栄員吉村 明文日高 直昭新谷 宇一郎
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1989 年 50 巻 2 号 p. 284-289

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抄録

Sipple症候群の1例を報告するとともに,本邦報告72例について検討した.
症例は50歳男性で,前頚部腫瘤を主訴に来院.家族歴に特記事項なし.入院時現症では血圧110/72mmHg,左甲状腺部に硬い腫瘤と頸部にリンパ節を数個解知した.胸・腹部には異常を認めなかった.画像診断にて左右甲状腺腫瘍と左右副腎腫瘍が認められ,CEA, calcitonin,さらにcatecholamineが異常高値を示した.尚,粘膜神経腫,マルファン様体型は認めなかった.以上より,Sipple症候群と診断し,先ず左副腎全摘出,右副腎腫瘍核出術を施行した後に,甲状腺全摘出・頸部リンパ節郭清術を施行した.病理組織診断はそれぞれ良性褐色細胞腫,甲状腺髄様癌であり,上皮小体には異常を認めなかった.
本例の家系調査において長女にcalcitonin値の軽度上昇が認められ,家族性発生の可能性が示唆された.

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