日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌診断における穿刺吸引細胞診の役割
児玉 孝也福内 敦伊藤 悠基夫小原 孝男藤本 吉秀平山 章川上 恭子
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1990 年 51 巻 3 号 p. 443-447

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抄録

乳腺穿刺吸引細胞診の有効性と問題点を検討した.Papanicolaouの分類でクラスIII以上を陽性,クラスII以下および不足を陰性とすると,乳癌178病変中159病変は陽性,19病変は陰性,また,良性病変272個中11病変は陽性,261病変は陰性であった.組織型別に細胞診陽性率をみると,充実腺管癌で高く,硬癌や小葉癌で低かった.また,腫瘍が小さくなるほど陽性率は低下した.偽陰性10.7%と偽陽性4.0%が生じた原因の約半分は細胞診判定の誤りにあり,残り半分は病変そのものの性質と穿刺技術の未熟さにあると考えられた.臨床上癌と診断され,かつ細胞診でクラスVかIVの結果を得たときはopen biopsyをせずに手術を施行してよい.また,臨床的に良性で細胞診でもクラスI,IIあるいは不足と出たときは様子をみてよい.しかし,臨床所見と細胞診の結果が異なるときは,open biopsyを行う必要がある.マンモグラフィーや超音波検査の欠点を補う有力な乳癌診断法と言える.

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