日本臨床外科医学会雑誌
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十二指腸狭窄を伴った腫瘤形成型膵炎の1例
小島 靖彦安川 ひろ美野手 雅幸新本 修一藤田 秀春中川原 儀三三宅 敏彦石黒 信彦
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1990 年 51 巻 3 号 p. 573-577

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抄録

腫瘤形成型膵炎は,常に膵癌との鑑別が問題である.今回,十二指腸狭窄を伴った腫瘤形成型膵炎の1例を経験したので報告する.
症例は49歳男性で,急性膵炎様の発作後,膵頭部の腫大と全周性の十二指腸狭窄を指摘され来院した.入院後のUSでは膵頭部は腫大し,その辺縁は不整で内部エコーも不均一であった.CTでは膵頭部に辺縁不整,境界不鮮明な腫瘤像を認め,内部に低吸収域をみた.造影CTでは,この低吸収域は不均一に染まり,また十二指腸壁は全周性の肥厚をみ,腫瘤との境界は不鮮明であった.血管造影では異常はみられなかったが,悪性病変を完全に否定しえず,膵頭十二指腸切除を施行した.摘出標本の肉眼所見で,膵頭部に5×4×2cmの腫瘤が存在したが,病理組織検索では多数の単核炎症細胞浸潤を伴った線維化をみるのみで,悪性所見はえられず限局性慢性膵炎と診断された.

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