日本臨床外科医学会雑誌
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回腸子宮内膜症の1症例及び本邦報告12症例の検討
安田 慎治中野 博重吉川 周作畑 芳樹村上 浩二八木 正躬
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キーワード: 子宮内膜症, 回腸, 腸閉塞
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1990 年 51 巻 3 号 p. 606-610

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抄録

回腸子宮内膜症の1症例を報告した.患者は42歳の女性で,約2年前から月経時臍周囲囲部痛,腹鳴を認め,嘔気,嘔吐も出現し,産婦人科にて子宮内膜症と診断され,投薬により軽快していたが,再度入院し,外科紹介となった.手術時回腸末端から約15cmの所に炎症性腫瘤を認め,虫垂にも炎症所見がみられた.虫垂切除,回腸20cm切除及び端々吻合を施行後,左付属器切除及び右卵巣嚢腫内容除去術を行った.回腸子宮内膜症の本邦報告例は12例であり,平均年齢36.3歳,記載のあった主訴の内腹痛が40%,嘔吐が25%と多く,下血は10%で大腸子宮内膜症に比べ少数であった.既往歴は87.5%に認め,術前診断は腸閉塞が30.7%,術中診断は子宮内膜症が40%であった.回腸以外の病変はS状結腸が50.2%,直腸,盲腸,虫垂がそれぞれ16.6%であった.子宮,卵巣,卵管に病変を認めた症例は66.7%であった.悪性腫瘍との鑑別,骨盤内病変に対する治療にも留意すべきである.

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