日本臨床外科医学会雑誌
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緊急肝動脈塞栓術にて止血後肝切除により救命し得た原発性肝癌破裂の1例
三村 哲重北村 元男戸田 耕太郎木村 秀幸大原 利憲筒井 信正広瀬 周平片岡 和男
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1990 年 51 巻 4 号 p. 728-732

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抄録

肝細胞癌の自然破裂は,本邦では決してまれではない.その診断,治療にはいまだ困難を来すことがしばしばで,予後は一般に不良である.最近救命しえた症例を経験したので報告する.症例は,56歳男性で肝硬変の治療中,右季肋部痛とふらふら感のため来院.超音波とCTおよび腹腔穿刺で肝細胞癌の自然破裂と診断し,緊急に肝動脈造影を施行した.肝左葉に腫瘍濃染像を認め門脈左枝は,造影されなかった.以上の所見から,選択的に左肝動脈の塞栓術を行い,止血に成功した.ひきつづき,腹水の消失をまって,十分な肝予備能の測定のもとに,肝左葉切除を施行した.摘出標本で,約4cmの腫瘍をS4に認め,腫瘍栓を,門脈左枝一次分枝まで認めた.肝細胞癌の自然破裂に対し,早期に適切な診断のもとに,動脈塞栓術にてまず止血を行い,肝予備能のいかんで手術適応を決定することが重要と考えた.

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