血行再建術が発達する以前では,血管の処理はほとんど止血に限られ,血管はいわば触れてはならない聖域であった.
血行再建術の普及に伴い,悪性腫瘍に対する手術の根治性を高めるために,血管への浸潤病変を積極的に切除するようになり,血管外科的手技は一般外科医にとっても必須なものになった.血行再建術を成功させるには,安全な血行遮断と確実な血管縫合が前提となる.
血行遮断による脳・肝の虚血性障害を防止するには,内シャント管使用により血流を維持するのが簡便である.血管縫合の原則は外反法による縫合であるが,大動脈領域では後壁内反法,前壁外反法,あるいは全周内反法のinlay吻合が確実である.血管病変の部位・範囲に応じて端々吻合またはパッチグラフト移植を用い,効果的な血行再建を図らねばならない.