日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌術後8年目の頸部食道転移の1例
室井 正彦吉田 操大村 光浩門馬 久美子榊 信広永井 鑑
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1990 年 51 巻 5 号 p. 946-950

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抄録

乳癌の遠隔転移のうち,消化管転移は比較的少なく,食道への転移は稀である.乳癌切除術後8年目に食道転移をきたした症例を経験した.転移性食道腫瘍に関して文献的考察を加えて報告する.症例は,63歳,女性.食物のつかえ感,嚥下困難を主訴に来院.頸部食道のスムースな狭窄で,生検組織診断は得られなかった.既往に8年前,右乳癌で非定型乳房切除術を施行.右外上,20×20×12mm, adenocarcinoma scirrhosum,n0 (0/11), t1n0m0 stage I,術後治療はなかった.乳癌の再発所見はなく,粘膜下発育の食道悪性腫瘍の診断で手術施行した.病理診断では,腫瘤は粘膜下を主体に発育し,食道から気管まで浸潤が認められ,腺癌の組織像で,既往乳癌の切除標本組織像とよく合致することから,乳癌の再発転移と診断された.文献的にも乳癌食道転移は約1.0%にみられ,良性及び悪性の粘膜下腫瘍との鑑別が重要である.乳癌の既往歴のある食道狭窄は,その転移再発も考慮して治療する必要がある.

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