1990 年 51 巻 5 号 p. 951-954
気管形成の合併症予防のため大網被覆を行った1例を経験した.患者は60歳,女性.甲状腺癌に対する手術を既に2回うけている.今回,呼吸困難を主訴として来院した.緊急気管切開を行った後,根治手術を行った.輪状軟骨を含めて気管を約4cm管状に切除し,食道の筋層も合併切除した.気管および喉頭を受動した後端々吻合した.また,右胃大網動脈を温存した有茎大網を作製し,胸骨後経路で頸部に引き上げ吻合部を全周被覆した.こうして吻合部と食道,頸動脈とを隔離した.術後の経過は順調で,一過性の反回神経麻痺も約2週間で改善し,気管切開カニューレも抜去でき,元気に社会復帰している.