日本臨床外科医学会雑誌
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妊娠時に発見された乳癌の3例
篠崎 登内田 賢武山 浩長原 修司南雲 吉則桜井 健司
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1990 年 51 巻 7 号 p. 1448-1451

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抄録

妊娠合併の乳癌3例を報告した.症例1と2は,妊娠中期に病期IVの進行乳癌発見され,挙児希望で治療がおくれ分娩後それぞれ2ヵ月目,17日後に死亡した.症例3は,妊娠初期に病期Iで発見され,人工妊娠中絶と乳癌の根治的治療を受けた.その16ヵ月後妊娠出産し,5年経過した現在健在である.
妊娠または援乳期に診断される乳癌の頻度は,全乳癌の0.4~3.8%,また妊娠3,000例に1例の割りに乳癌を合併すると言われている.しかし,妊娠可能年齢に限ると妊娠と乳癌の合併率は当然上昇するので,全乳癌に対する頻度の5から8倍になる.
妊娠・授乳期に発生する乳癌の診断は,乳腺の妊娠による変化のため困難となりやすく,進行してから診断される症例が多い.ただし病期別にみた経過は,一般の乳癌と差がないとする報告が多い.したがって,妊娠時における乳腺腫瘤の評価には積極的な診断的アプローチが一層必要と思われた.

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