1991 年 52 巻 4 号 p. 737-740
切除方針を設定して行われた高齢者(80歳以上)進行大腸癌症例の治療成績を検討した.対象は10年間(1979年~1988年)に経験した34例である.まず,生活度指数分類に基づいて切除可否の選択を行い,待期手術では生指分類IV度,緊急手術では生指分類III度とIV度を切除手術適応外とした. 8.8%が適応外となり,いずれも1年以内に他病死した. 31例のうち29例に切除(切除率93.5%), 25例(80.6%)が治癒切除であった.高齢を意識しての操作は,リンパ節郭清の縮少化,低位前方切除での吻合の回避,硬膜外麻酔法の頻用,であった. 32.4%に手術合併症の発生をみ,直接死亡率は5.9%であった.治癒切除例の累積生存率は, 3生61.7%, 5生54.8%であった.長期の経過観察中,癌の再発と脳血管障害の発生が生指分類を下げる重要な因子であった.