1991 年 52 巻 4 号 p. 805-808
小腸に発生する平滑筋腫は比較的稀な疾患であり,開腹して初めて診断される場合も多く見られる.今回私たちは急性腹膜炎の診断のもとに開腹したところ,回腸平滑筋腫の穿孔であった1例を経験した.
症例は57歳男性,突然の下腹部痛にて来院.腹部症状と超音波検査により急性腹膜炎の診断で開腹術を施行.回盲弁より約2mの回腸に穿孔を来した小腸腫瘍を認め切除した.組織病理学的には回腸平滑筋腫と診断された.腫瘍には中心壊死による空洞が形成され,小腸管腔面の小潰瘍から瘻孔を通じて穿孔を生じていた.
小腸平滑筋腫の主症状は出血・腹痛・腫瘤触知が挙げられるが,自験例は消化管出血を生じることなく穿孔に至った1例であった.