日本臨床外科医学会雑誌
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急性虫垂炎と鑑別が困難であった盲腸脂肪腫の1例
槇島 敏治Takao ASANO河野 正賢
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キーワード: 脂肪腫, 盲腸, 虫垂炎
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1991 年 52 巻 4 号 p. 819-822

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抄録

結腸の脂肪腫は良性腫瘍のなかでは腺腫様ポリープに次いで二番目に多いとされるが比較的稀な疾患である.粘膜下腫瘍の形をとることが多く,小さいものは無症状だが,大きさが2cmを越すと疼痛や出血,腸重積などの症状がでてくると言われている.
今回,急性虫垂炎と鑑別が困難であった盲腸脂肪腫の症例を経験した.患者は85歳の女性で右下腹部痛で発症した.術中所見では虫垂には炎症所見がみられず盲腸内に腫瘤を触知したため,盲腸切開により脂肪腫の診断がつき有茎性の腫瘤を切除することができた.
急性虫垂炎と誤診された例は3例報告されているが,術中所見によっても癌などの悪性疾患との鑑別が困難なことから,過大な手術が行なわれる事が多い.しかし大腸の脂肪腫は小腸とは異なり悪性のものはほとんどなく,術中所見を的確に判断すれば,過大な手段侵襲を防ぐ事も可能と考えられる.

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