日本臨床外科医学会雑誌
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直腸孤立性潰瘍症候群の3例
塩田 摂成西江 浩米川 正夫太田 道雄木村 修貝原 信明
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1991 年 52 巻 4 号 p. 823-827

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抄録

直腸孤立性潰瘍症候群は,直腸に非特異性潰瘍を生ずる良性疾患の一つであるが,それほど広く知られていないことから,潰瘍型は癌と,隆起型は腺腫と誤診されやすく,本症の存在を知ることは過大手術を避けるためにも重要なことと考えられる.本疾患は過度の排便時のいきみとそれに引き続く直腸の粘膜脱による虚血性変化と関連があるとされている.われわれは若年者に発生した直腸孤立性潰瘍症候群の3例を経験したので報告する.隆起型を呈した2例は, 16歳男性, 16歳男性,混合型の1例は35歳女性で,元来,排便時間が長く強度のいきみを伴う傾向にあり,肛門出血,肛門部痛を愁訴として来院した.隆起型の症例は下部直腸に小指頭大の腫瘤を認め,経肛門的局所切除を施行した.混合型の症例は副腎皮質ホルモン配合痔疾患用坐薬の使用にて軽快した.切除標本ならびに生検標本の検索にて,これら3症例には本症に特徴的なfibromuscular obliterationが認められた.

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