日本臨床外科医学会雑誌
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肛門に嵌頓した胆石摘出を契機として発見された特発性胆嚢十二指腸瘻の1例
中村 勝隆河野 富雄楠本 長正安宅 啓二橋本 兼太郎
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1991 年 52 巻 4 号 p. 849-853

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抄録

痔核手術後の瘢痕狭窄を示す肛門に嵌頓した胆石の摘出を契機として発見された特発性胆嚢十二指腸瘻の1例を報告する.
患者は76歳男性.主訴は上腹部痛,嘔吐.一過性イレウス後,肛門管より直径20mmの胆石を摘出.腹部単純撮影・超音波・CTで胆道内ガス像と胆石を, ERC・上部消化管透視で胆嚢と十二指腸の交通を認め,特発性胆嚢十二指腸瘻と診断.胆石の残存と二次的な胆道感染や肝機能障害の防止の理由から手術を施行.胆嚢膨大部と十二指腸球部の間に直径15mmの瘻孔を認め,術中胆道造影では他に瘻孔を認めず,胆摘,瘻孔閉鎖,総胆管切開・T-tube drainageを施行し,根治し得た.
特発性内胆汁瘻は手術,外傷などの外的要因によらず,胆道系と周囲臓器間に生じた異常交通路の総称であり,原因は胆石症が85~90%を占める.治療の原則は,原疾患の治療,瘻孔の切除と瘻孔開口部の閉鎖,適切な胆道ドレナージの3つである.

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