日本臨床外科医学会雑誌
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膵頭十二指腸切除術後に空腸に穿破した仮性肝動脈瘤の1例
山本 聡飛永 晃二武富 勝郎君野 孝二佐藤 行夫吉田 彰羽田野 和彦芦塚 修一二川 栄
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1991 年 52 巻 4 号 p. 844-848

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抄録

腹部手術後原因不明の上部消化管出血はしばしば起こる重篤な合併症である.今回われわれは膵頭十二指腸切除後空腸に穿破した仮性肝動脈瘤の症例を経験しTAEにて止血し得たので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は67歳男性,中部胆管癌の診断で入院した.膵十二指腸切除を加えた胆管切除術を施行し胃膵吻合-Bill I法,肝管空腸端側吻合法にて再建した.術後胃膵吻合部にminor leakageを認めた以外は比較的順調な経過をとっていたが,術後111日目に突然吐血し,ショック状態となった.直ちに胃内視鏡検査を行ったが出血部を確認できず,更に翌日の開腹術でも胃膵吻合,胃空腸吻合部に著変認めず出血点を明かにできなかった.術翌日より再吐血あり腹部血管造影を行い,総肝動脈に2個の動脈瘤を認めたためスチールコイルによる塞栓術を行い止血に成功した.尚,左肝動脈は左胃動脈より分岐していたので温存できた.現在元気に社会復帰している.

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