1991 年 52 巻 4 号 p. 859-864
腹腔鏡下胆嚢摘出術は開腹を行わず,腹腔鏡観察下に胆嚢を摘出する術式である.当教室では本邦第1例を含め,今日までに計5例に本術式を行った.現時点では手技的に限界があることから,その適応を結石を有する慢性胆嚢炎及び悪性を否定しえない胆嚢ポリープとし,胆管結石や胆嚢壁肥厚例及び上腹部手術歴のある症例は除外した.本法は開腹による胆嚢摘出術とは異なる良好な視野が得られ,胆嚢管,胆嚢動脈の処理を確実に行えば,出血も非常に少なく安全に行いうる術式である.未だ5例と経験症例数も少なく,手技的な面や器具類に更に改良を加えなければならない段階であり,手術時間,術後合併症,術後入院日数などの点では十分満足すべき結果を得ているとは言えないが,従来の胆嚢摘出術と比較して,手術侵襲,術後疼痛,術後回復及び美容面において大きな利点を有することから,今後も積極的に行うべき術式と思われた.