日本臨床外科医学会雑誌
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総胆管に輪状狭窄を認め,総胆管結石・肝内結石を併存した成人の胆道拡張症の1例
木下 誠一林 雅郎椿 雅光久保 博彦大串 直太岩橋 寛治恒川 謙吾
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1991 年 52 巻 4 号 p. 865-870

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抄録

症例は64歳の女性,右季肋部痛にて発症した.諸検査にて,肝内結石・胆道結石を伴う胆道拡張症と診断,その成因として膵管胆道合流異常と総胆管隔壁症が示唆された.胆嚢摘出・胆道切石・総胆管嚢腫切除・肝外側区域切除・肝管空腸吻合をRoux-Yで行い,空腸盲端は腹壁に固定した.術中の胆道造影所見からは,膵管胆道合流異常はないものと判断したが,胆汁アミラーゼ値は,その診断基準案をみたしており, X線学的診断との間にdiscrepancyがみられた.総胆管の輪状狭窄部は膵外にあり,内腔はpinhole状で明らかな隔壁を認めなかった.組織学的には線維化が著しく炎症細胞がびまん性に滲出しており, chronic choledochilitisと診断された.総胆管の良性輪状狭窄により胆道拡張をきたしたものと推察した.総胆管隔壁症による胆道拡張症の報告は散見されるが,著者の検索しえた範囲では,かかる症例の報告は見当たらなかった.諸賢の御批判を仰ぎたく報告する.

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