1991 年 52 巻 4 号 p. 871-875
65歳男性. 1988年5月23日突然の上腹部痛,間欠的な血便を訴えて来院.入院時,上腹部に圧痛を伴う手挙大の腫瘤を触知し,貧血,血清アミラーゼ高値,便潜血強陽性.エコー, CTにて50×45mmの膵嚢胞を認め,造影CTにて嚢胞内の類円形濃染像を認めた.膵嚢胞内への出血と判断し,腹腔動脈造影を行ったところ,脾動脈中部より嚢胞内へ間欠的,ジェット状に出血している瞬間をとらえることができた.根治的手術を行い,仮性膵嚢胞に隣接した脾動脈に炎症が波及し波綻出血した後,膵嚢胞内の血液が主膵管をへて十二指腸乳頭部より十二指腸に排出されたと診断した.仮性膵嚢胞内に間欠的,ジェット状に出血している瞬間をとらえた症例は非常にまれである.