1991 年 52 巻 4 号 p. 881-886
症例は慢性膵炎で経過観察されていた71歳の男性で, CT,超音波検査にて膵頭部の嚢腫,主膵管の拡張を指摘され精査目的のため入院となった. ERP像では主膵管はび漫性に拡張し,頭部で嚢胞状となり,一部陰影欠損像を認めた.腫大した十二指腸乳頭は広く開大し,粘稠な粘液の流出を認めた.細胞診にてGroup IVを得たため,粘液産生膵癌の術前診断のもとに膵頭十二指腸切除術を施行した.その際,病変の確定のため術中膵管鏡が有効であった.切除膵を病理組織学的に検討すると,頭部主膵管内から発生した高分化型乳頭腺癌であった.本邦報告91例の検討とともに若干の文献的考察を加えて報告する.