1991 年 52 巻 4 号 p. 887-891
重複癌は比較的稀な疾患とされてきたが,近年,診断および治療法の進歩にともない,その報告は増加傾向にある.しかしながらその組み合わせによっては極めて稀な症例もある.今回われわれは右季肋部痛を主訴として精査中に,腹部超音波, CT検査にて膵頭部腫瘍,右腎腫瘍を指摘され,膵全摘,右腎摘出により切除し得た同時性重複癌を経験した.術後約10カ月,膵癌より小腸,横行結腸,肝,肺への多数の転移で死亡した.膵癌に合併する重複癌は比較的頻度が高いという報告もあり,膵癌と診断した場合,重複癌の存在を考慮すべきと考えた.