抄録
虫垂の肉芽腫性炎症は稀な疾患であり,集計しえた限りでは,本邦では,自験例を含め8例の報告があるにすぎない.そのうち5例は虫垂Crohn病として報告されているが, Yersinia pseudotuberculosis感染症であっても同様の組織像や経過を示すとの報告もある.今回著者らはCrohn病を思わせる組織像を呈した虫垂炎の1手術例を経験した.症例は, 17歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院.回盲部に手拳大の腫瘤を触知,腹膜刺激症状を認め,急性虫垂炎の診断にて手術を施行.虫垂は,ソーセージ状に腫大しており,組織所見では,全層性の炎症とともに,巨細胞と類上皮細胞からなる非乾酪性の肉芽腫像を示し,肉芽腫性虫垂炎と診断した.虫垂の肉芽腫性炎症については,組織学的検討はもとより,細菌学的な検討や,長期にわたる経過観察が必要であると考えられた.