抄録
大腸癌511例のうち,大腸粘液癌と診断された16例(3.1%)を対象として,臨床病理学的検討を行った.男性4例,女性12例と女性が多く,年齢では60歳以上が13例(81.3%)と高齢者が多かった.占居部位は,結腸右半と左半がそれぞれ8例であった.肉眼型では2型が9例と最も多く, 3型は3例であった.遠隔転移としては2例に腹膜播種を認めたが,肝転移例はなかった.リンパ節転移は71.4%と高率に認め, n2以上は44.4%であった.また,深達度ではpm以下が1例, si (ai)の症例が6例と深達度の深い症例が多かった.以上のように進行例が多かったが,全例切除可能であり,治癒切除率は78.6%と高率であった.再発は6例で,全例2年以内に腹腔内再発にて死亡した.他病死3例と予後不明1例を除いた5年生存率は50%とやや不良であった.以上より,大腸粘液癌は進行例が多く,再発形式としては局所再発を含めた腹腔内再発が多いことから,その対策が必要と思われた.