日本臨床外科医学会雑誌
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先天性頸部瘻孔症例の臨床的検討
原 普二夫佐々木 信義小林 俊三山川 洋右岩瀬 弘敬江口 武史正岡 昭
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1992 年 53 巻 3 号 p. 498-503

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抄録

教室にて経験した先天性頸部瘻孔症例53例(甲状舌管嚢胞38例,側頸瘻12例,梨状窩瘻3例)に臨床的検討を加え報告した.性別は,女29例,男24例,手術時年齢は5カ月から70歳, 15歳以下の小児例は34例(64%)であった.
甲状舌管嚢胞,側頸瘻では小児期発症はそれぞれ30例(79%), 7例(58%)であった.初発症状は,甲状舌管嚢胞では腫瘤,側頸瘻では瘻孔が多かった.感染は甲状舌管嚢胞14例(37%),側頸瘻4例(33%)にみられた.
3例の梨状窩瘻は難治性の頸部膿瘍,急性化膿性甲状腺炎,縦隔膿瘍にて発症したが,梨状窩瘻との診断が困難な症例もあった.咽頭造影にて瘻管の描出されなかった1例の診断と術中の瘻管の確認に硬性気管支鏡の応用が有用であった.
先天性頸部瘻孔症例の手術治療における最大の課題は再発防止であり,正確な解剖学的知識に基づいた確実な手術が必要である.

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