抄録
乳腺分泌癌の発生は極めて稀である.われわれは若年性の乳腺分泌癌を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は21歳の女性で左乳腺腫瘤を主訴に来院する.左乳房乳輪直下(EAC領域)に, 2.5×2.0cmの不整形腫瘤を触知,一部乳輪に浸潤所見を認めた.左乳癌が疑われ,手術施行.術中迅速病理検査にて乳癌と診断された.ひき続いて非定型的乳房切除術を施行した.術後の病理組織所見では,腫瘍細胞は甲状腺濾胞様の像を呈し,乳管内に小管腔を形成し,この内外に特徴的なエオジン好性, PAS染色陽性の分泌物を認め,乳腺分泌癌と診断された. (stage III: T4n0m0),術後1年7カ月を経過した現在,再発の徴候を認めていない.本症は臨床的に比較的予後良好とされているが,腋窩リンパ節の組織学的転移をときに認めるため,治療として腋窩郭清を伴う手術が必要であると考えられた.