抄録
心筋梗塞既往例または狭心症合併例の手術前後の心筋梗塞の発症率は高い.よって,冠動脈疾患合併症例では,外科手術に消極的になりがちである.
われわれは狭心症合併食道癌に対し,術前に経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)を施行した後,食道癌根治術を施行し得た症例を経験した.症例は64歳男性,主訴:上腹部痛.既往歴: 53歳下壁心筋梗塞, 2カ月前より狭心発作出現.食道造影,内視鏡等より早期食道癌の診断.冠動脈造影では右冠動脈の segment 2に90%の狭窄を認めた.同部位にPTCAを施行し, 1週間後に胸部食道全摘術を施行,後縦隔経路にて再建した.術後24カ月目を経過した現在,再発の徴候や狭心発作もなく,健在である.
食道癌治療にあたっては,冠動脈疾患合併例でもPTCAが成功すれば,積極的に根治術を施行すべきと思われる.