日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
左肺門部腫瘤影で発見された完全縦隔内甲状腺腫の1手術例
正岡 直子古畑 善章増田 亮田中 勲井上 雅晴武村 民子
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 54 巻 1 号 p. 66-69

詳細
抄録
縦隔腫瘍としては比較的稀な完全型縦隔内甲状腺腫を経験したので報告する.
症例は, 35歳女性,平成3年4月,健康診断の胸部X線撮影で,異常陰影を指摘され当院に紹介となった.胸部X線撮影で左肺野に突出する楕円形の陰影を認めた. CT, 断層撮影では,大動脈弓に接する, 7.5×5.5cm大の境界明瞭で,内部不均一な腫瘤影を認めた.経皮針生検では,腺細胞を認め,甲状腺シンチを施行.甲状腺左葉下極に連続して,不均一な集積を認め,縦隔内甲状腺腫と診断した.
5月20日,手術を施行.腫瘍は,一部甲状腺左葉下極に接していたが,正常甲状腺組織との連続性はなく完全縦隔内甲状腺腫と診断した.栄養動脈は,腕頭動脈起始部より分岐した最下甲状腺動脈で,病理所見は,大小の濾胞形成からなる甲状腺腫であった.完全縦隔内甲状腺腫は本邦で53例の報告があり,うち,肺門部の異常陰影として発見された例は, 4例と少ない.文献的考察を加えて報告する.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top