日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
噴門側胃切除後に幽門形成部に一致して発生した幽門側残胃癌の1例
久保 宣博内田 雄三松本 克彦野口 剛平岡 善憲村上 信一
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 54 巻 11 号 p. 2836-2841

詳細
抄録

噴門側胃切除術後,幽門側残胃の幽門形成部に一致して癌が発生した症例を経験した.症例は69歳男性.昭和61年3月3日に噴門部癌に対して噴門側胃切除術(迷走神経切離,幽門形成,空腸間置)を施行した.切除標本は組織学的に低分化型腺癌 (pm, INF-γ, ly1, v0, ow(-), aw(-)) であり,リンパ節転移は認めなかった.術後4年9ヵ月後に,内視鏡検査にて残胃の幽門形成部に一致してBorrmann 2型腫瘤を認め,生検にて腺管腺癌と診断された.手術は,間置空腸の一部を含めた残胃全摘並びにリンパ節郭清を行った.切除標本では,幽門形成部に一致して限局潰瘍型の乳頭状腺癌 (pap, se, INF-β, ly3, v1) を認めた.本症例においては,術中の管内播種や同時性多発癌巣の可能性も完全には否定できないが術後十二指腸液の幽門側残胃内への逆流による化学的刺激や,幽門形成術そのものによる物理的刺激による幽門形成部の発癌が示唆され興味のもたれるところである.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top