抄録
症例は70歳,女性で,胃集検にて胃上部の粘膜異常を指摘され,検査目的で当科に入院した.胃X線・内視鏡検査で,胃上部大彎に隆起性病変を認めた.精査にて,肝左葉・脾を圧排し,左横隔膜から腎門部にかけて出血・壊死と思われる内部不均一な腫瘍が認められ,ドレナージを施行した.生検にて平滑筋肉腫が疑われ,化学療法を施行したが縮小は見られず,胃全摘術を施行した.腫瘍は胃上部を巻き込む様に存在し,24.0×18.0×18.0cmの大きさで脾臓に接するまで浸潤しており,割面は比較的硬く白色で,壊死をあまり伴わない均一のものであった.光顕で,紡錘細胞が一側に流れる様に配列されており,Actin染色は陰性で, S-100蛋白が陽性を示したことから,胃神経肉腫と診断した.以上,極めてまれな胃神経肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.