抄録
症例は47歳,女性.右乳腺腫瘤と同側腋窩有痛性腫瘤を主訴に来院した.穿刺細胞診で非上皮性悪性腫瘍が疑われ,非定型的乳房切断術を施行したが,病理組織学的には, LSG分類non-Hodgkin lymphoma, diffuse mixed typeの悪性リンパ腫と診断された.術後諸検査では他部位に異常がなく,乳腺原発の悪性リンパ腫と診断した.術後化学療法施行後2年を経過した現在,再発は認められていない.本疾患は比較的稀であり,本邦報告例は133例である.本疾患の臨床的特徴を要約すると以下の通りである. (1) 右側C領域が多く,診断時の腫瘍径が乳癌に比べ大きい. (2) 術前診断で画像診断は困難であり,主に組織診に依存する. (3) 5年生存率は37.5%と乳癌に比べ予後不良である. (4) 予後を左右する因子として腫瘍径と腋窩リンパ転移の有無が重要であり,根治手術に加え化学療法等の集学的治療が予後改善に必要である.